2010年1月13日水曜日

Google中国撤退報道を考察する。Googleは神か悪魔か?

 高額なOS料金と、高額なオフィスアプリケーションと、数年おきに繰り返される性能向上という名目のバージョンアップで、定期的にお金を徴収する巧みな経営戦略で王国を築いたマイクロソフトは長年ICT業界では「悪」とされてきました。

そして、近年その「悪の帝国」を切り崩す、あらゆる物を無償で提供する、消費者にとっての正義の味方「google」が登場しました。

消費者の目線で考えると、お金をあらゆる手段で搾り取ろうとするマイクロソフトを悪魔とするなら、Googleは神様とも言える存在と言っても過言ではないのでしょうか。

そんな「神様」googleのこんな記事が、今朝、ICT業界では話題になりました。
Google、中国からの大型サイバー攻撃に中国市場撤退も

話題になるのもうなづけます。今後中国はアメリカを抜いてGDP1位となり、世界の中心はアジアとなり、アジアの中心は中国であると言われている、今後の経済活動において、「超VIP」と言っても過言ではない、「中国」からの撤退を示唆したのだから当然です。

先程の記事から、googleが撤退する理由としては、「自社のユーザである中国の人権活動家のGmailアカウントに侵入しようとする、といった不正アクセスが中国から行われた」その結果「Googleの知的財産の窃盗」が行われたというのが同社の主張です。

この説明は最もであり、異論はありません。将来的に経済上重要な国である、今の中国に対して、不正を不正だと主張出来る姿勢は立派としか言い様がありません。ましてや、「神様」googleの主張に間違いなんてあるわけがないですよね。

この記事が報道されると、Twitter上には「Google偉い!」「他社も追随しろ!」といった、Googleは正しくて、中国は誤っているという趣旨のコメントを多数みかけました。そして、いつしか、完全にgoogleが正義で、中国が悪という図式が形成されていくように見えました。

しかし、撤退の理由は本当にそれだけでしょうか?ここで、googleのビジネスモデルをもう一度考えてみましょう。

最近ではAndoroidがあらゆる製品で採用され、Nexus Oneを発表し、Web以外の領域へも進出を進めており、手広く成功しているように見えるgoogleですが、その主な収益源は「広告」である事は今も昔も変わりありません。

自社の製品を無料で提供する事で、ユーザを集め、世界中のトラフィックを手中に収め、その結果世界中の企業から集めた広告費を収入源とする。一見ユーザには全てを無料で提供する神のような存在のgoogleですが、ボランテイアで運営しているわけではなく、収益を上げる責任を課せられた「株式会社」である事に違いはありません。そして、「株式会社である」という事は、マイクロソフトもGoogleも同じです。両社共に株主の期待に応えるために、手段が違っても「成長」という目標に向かって進んでいる事に違いはありません。

□中国のWeb広告の現状
Web広告で最も効果的に収入を得られる物といえば、googleが大きな成功を収めている「検索」が最も有用なコンテンツだという事は容易に想像出来ます。なぜなら、この広いインターネットの世界を検索サイト無しでは、目的の情報へ辿り着くことが出来ないからです。

ユーザは何か情報が欲しいと思う度に、検索サイトを訪れ、検索したい語句を入力します。言ってみれば、ユーザが情報を知りたいと思った数だけ、広告を表示させる事が可能だということです。

そんな重要な検索エンジンの中でもシェアトップであるgoogleの検索結果に表示されないという事は、インターネットの世界から抹殺されたのも同然です。ですから、商品を知って貰いたい、自社を知って貰いたい企業は、Googleに多額の広告費を支払い、googleは莫大な利益を上げています。

では、中国のWeb広告に目を向けた時も、googleは圧倒的に有利な立場におかれているのでしょうか?実はそうではありません。中国では「百度」と呼ばれる検索エンジンがシェアトップであり、検索エンジンのシェア60%前後を獲得していると言われています。中国の検索エンジン市場ではGoogleはシェア30%前後の2位に甘んじています。

この結果から考えると、Googleから見た中国におけるWebビジネスとはこのように見えているのではないでしようか。



世界のユーザは、検索となれば、googleに訪れ、広告を見てくれます。そして検索をフックとしてクラウドアプリケーションもgoogleのアプリケーションを利用させる事で、ユーザにより多くの広告を表示される事が可能になり、広告主から更に広告収入を得ることが出来るようになるでしよう。

とはいえ、最も広告収入に貢献するのは、利用頻度が最も多い検索エンジンで。クラウドアプリケーションは仕組みも複雑であり、運用、維持するコストを考えると、広告ビジネス自体には、まだそれ程貢献できてはいないのではないでしょうか。

そういった視点で、中国を見てみると、検索エンジン企業であるGoogleから見ると、最も収益率の高い検索エンジンを利用してくれず、運用負荷の高いクラウドアプリケーションの利用ばかりをする「お金のかかるユーザ」という風に見えなくも無いのではないでしょうか。

□googleが撤退する本当の理由
表向きは不正攻撃となっていますが、この不正攻撃に対処するために、クラウドアプリケーションのセキュリテイに手を入れることは、更に運用コストが増す事を意味します。たいして検索エンジンからの広告収入を期待出来ない中国でビジネスを継続していくメリットは少ないと言えるのでは無いでしょうか。

Googleは、海外からの中国企業に対する検索を表示し、中国のサイトへ案内してあげる。しかし、中国企業は百度へ広告費を払う。これでは、Googleは中国に対してボランティアを行っているような物です。

中国全体のWeb広告市場は全体で約70億元(900億円)であり、Googleは約30%程のシェアを得ていますが、世界景気の低迷で広告単価が下落傾向にある現在、収益率を悪化させる恐れも強い、セキュリテイリスクの高い中国からの撤退は経営的視点から見ても妥当と考えられるのではないでしょうか。

また、中国の独特の習慣や、法令に対応するコストも馬鹿にならないのではないかと推測します。

□儲からないことはやらないgoogle
Googleを巡ってこのような記事が話題になった事があります。
「Googleはネット中立に反する」――Google Voice遮断問題でAT&Tが批判


Google voiceとはGoogleがSkypeの4億人のユーザを獲得するために、開始した電話アプリケーションです。
Google voiceを利用することで、1つの電話番号で、職場、自宅、ホテルといったあらゆる場所に電話を転送してくれるという非常に便利なサービスです。更にボイスメール(留守電メッセージ)はプログラムによってテキスト化され、電子メールやショート・メッセージ・サービス(SMS)のメッセージで転送されるといったサービスや、無料の電話会議など多数の特徴を備えています。


しかし、この便利なサービスはgoogleが電話代を電話会社に支払わなければなりません。そこで、googleは電話代の高い地域に対してこのサービスの利用を禁止しています。

一見ユーザには「無料で全てを提供してくれる神様」のように見えるgoogle。そのため私達はGoogleが利益を追求する企業である事を忘れ勝ちですが、このニュースは採算が合わないと判断すれば、利益を優先する「株式企業」としての顔を持っている事を改めて確認させてくれた事例です。

□googleは神か悪魔か?
もし、私達がgoogleの提供するサービスを使いつづけ、そこで表示される広告から「買い物」する限り、googleは私達に無償で素晴らしいサービスを提供し続け「神」のような存在で居てくれることでしょう。

googleは素晴らしい企業であり、革命的でビジョンに溢れた、世界トップクラスの企業である事に間違いはありませんし、今後もその勢いは衰える事はないでしょう。

これからはクラウドの時代。Googleは間違いなく大多数のユーザの支持を得るでしょう。しかし、PC、モバイルから発生する全てのトラフィックを「Googleクラウド」に飲み込んだ時。彼らは永遠に「神のgoogle」で居てくれるでしょうか?


常に右肩上がりの成長を要求される「資本主義」の世界では、全てのライバルからシェアを奪い、全てを飲み込んでしまっても、成長を止める事は出来ません。いづれ、お金の取り先が、企業から個人へ向かう時がくるかもしれません。


もし、ある時、google依存の社会インフラが誕生し、利益優先の「悪魔のgoogle」に代わったら?ある日突然クラウドが有料になり、全てのGoogleに依存する人々は「お布施」を要求される事になるかもしれません。


そして、私達がgoogleから「儲からない」と判断された時。彼らは一瞬で日本という国を見捨てて、他の儲かる国とサービスへリソースを投入する事でしょう。そうなったとき、googleに依存している人達には、まるで「悪魔」のように写るのではないでしょうか。

また、個人から見れば常に「神」なgoogleですが、googleトラフィックを運び続けるキャリアにとっては、Googleは収益を圧迫する「悪魔」の一面も持っている事を忘れてはならないでしょう。

そして、googleに敵対する企業は、自社の市場にGoogleが参入してくる事を恐れるでしょう。何しろGoogleは全てのサービスを無償化していくのですから勝負になりません。

Googleとマイクロソフト、手段は違っても、成長性のある分野に進出して、ライバル企業を全て制圧するという目標はどちらも同じであり、googleと戦う企業にとっては、googleは恐ろしい「悪魔」に写るでしょう。

□google報道に見る、ジャーナリズムとは?
上述したように、googleは1企業であり、1企業であるからには、利益を追求しなければなりません。googleが無償で個人にサービスを提供するため、「利益を追求する企業」である事を忘れがちになってしまいますが、googleの行動は「自社の利益」を考えての結果だという事を忘れてはならないでしょう。

googleは消費者の指示を得ており、その消費者の気を害さないために、最近のインターネット上のgoogleを取り扱うニュースは、googleを好意的に取り上げているようにも感じます。

今回のニュースも、Google側の主張のみを取り上げ、中国が悪、Googleが正義のようにインターネット上で伝えられる事が多いですが、冷静に考えれば「企業としての選択をしただけである」とも考える事が出来ます。撤退をほのめかすことで、中国政府との交渉を有利にする、交渉の手段とも考えられるでしょう。

双方の視点からの背景も交えた考察もなしに、どちらか一方の発表だけを取り上げ、善悪といった構図の報道をする事は問題があるのではないでしょうか。

ジャーナリズムとは真実の姿を伝えるべきであり、ある一つの思想の基に走り、その背景を考察せず、目に見える表面上の発表や、読書の喜びそうな記事を書く事はジャーナリズムとは呼べないのではないかと私は思います。

この報道が流れた後、まるで中国を敵対視するかのように、「頑張れgoogle!」「他の企業も追随しろ!」といったようなコメントを見る事が多く、冒頭に述べた「多数の意見が正義になり瞬時に伝搬するTwetter時代のネットの怖さ」を感じた瞬間でした。

□今回の報道に対する私の考え
私自身の今回の報道に対する意見は、中国が悪いとも、googleが悪いとも思いません。googleは企業として当然の対応をしただけであり、中国はこれからのインターネット時代に向けて対応を考慮すべきだと思います。ようは、善でも悪でもなく、インターネットの発展途中の文化である中国に未熟な点があっただけであり、これを契機に改善すれば良いだけではないかと。

Googleも本気で中国からの撤退を考えているわけではないでしょう。もし、撤退したとしても、それは一時的な物であり、数年後には復帰するでしょう。

中国のGDPが世界一位になり、経済的に中国を無視できなくなれば当然株主は中国でのビジネスを望むでしょう。一企業であるGoogleが株主からの声を無視して、経営を続けていく事は不可能なのですから。Yahooやマイクロソフトも追随するかも?といった報道も流れていますが、同様の理由で撤退するような事はないでしょう。


もし、永遠に中国市場を対象としないとするなら、代わりの成長市場を探しだして、中国市場から得る筈だった、「ノビシロ」を他から探してこなければなりません。中国の成長を補填出来る市場など、これからの世界のどこに存在するというのでしょうか。

それを見つける事が出来ないのなら、株主はさっさと、中国市場で成長を収めそうな、他の企業に投資先を変更することになるだけでしょう。

基本的に今回の件をきっかけに、本当に撤退する事は無いと思いますが、もし、googleが本当に撤退したとしても、今回の報道で語られている主張は本当の理由では無いでしょう。

現状の中国での自社ビジネスの成長を持続する事が難しい、又は、他事業へリソースを集中する等の理由が妥当なのではないかと思います。しかし、そういった理由では中国に期待を寄せる多くの株主達を納得させる事は難しいため、解り易いスケープゴートとして、不正アクセスが利用されたのではないかと思います。

そうでなければ、グーグルクラウドが不正アクセスに負けたという事になれば、反クラウドを唱える勢力にとって、クラウド化をさせない格好の口実となるだけなのですから。

2 コメント:

  1. シェアが問題ならとっくに韓国から撤退してるでしょう。
    ユーザー数が問題なら、中国での30%は他のどんな国よりも多くの
    ユーザー数になるでしょう。

    また、セキュリティはクラウドではなくてネットワークに大して
    されたものです。オンプレミスかクラウドかは関係ないでしょう。

    今回の行動がheroicだというつもりはありませんけど。

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  2. 読んででなんかどうでもよくなった

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